イネの生育 と 気温(気象)との関係

冷夏なのだろうか?
令和になって2か月が過ぎた2019年7月中旬、気象庁は東北の太平洋側や関東各県で気温の低い状態が 7/20頃まで続くとして農作物の管理に注意を呼び掛けています。
また メディアは、20日連続して日照時間が少なく例年の 1/10だと各局が報道。
さらに、平成5年の冷夏の再来か?と賑やかになっている。

「今年、お米は大丈夫?」 
毎日流れるメディアの報道で、お客様からは心配の声が出てきましたので、
私が平成5年以降から行なってる簡単な《チェック法》を公開します。

誰にでも出来る、私のチェック法

① 先ず、以下の基礎知識を覚えて下さい。
  これが判断基準の重要事項となります。

5月に田植えをした東北・関東甲信越において、6月末~7月の「イネの生育ステージ (期間)」を専門用語で言うと「幼穂形成始期から減数分裂期」に該当します。

この期間は、イネの茎の生長点に穂の元となる幼穂 や 花粉が作られます。
つまり “お米の赤ちゃん” が育つ大事な時なので、低温にもっとも弱い時期となります。
平均気温が20℃以下、また夜温(最低気温)で17℃以下の日が続くと、「えい花」 や
「花粉」が障害を受けて不稔(実がならない)になります。
《 えい花 》とは イネの花のことで、それが「一粒一粒 の 籾(モミ)」になります。
と いう事で、これらの点をしっかり覚えておいて下さい。

尚、低温が続いた時の一般的な対策は、イネの幼穂を保護する為に田んぼの水を深くする
“深水管理” です。
深水の目安は、幼穂形成期(出穂前 20~25日)で10㎝以上。
減数分裂期(出穂前 8~15日)で15~20㎝以上と言われています。

② 私が行なっている “チェック法”

一般紙の新聞の社会面に全国のお天気が載っていますので、毎日切り抜きします。
私はこれをハガキ用のファイルに入れ、5~9月分を保存します。

右記は、
令和元年 7/6 ~ 7/13分のページ

左記は、令和元年 7月7日(七夕)の切り抜き。

私はこのお天気情報をそのままファイルに入れる
のでは無く、平年との気温差をチェックし、目視で見易くするため蛍光ペンで色付けしてからファイルに保存します。

平年との温度差の色分けは、最高気温・最低気温双方とも下記の通りです。

平年との差が  +4℃以上は ピンク色

平年との差が  -4℃ ~ -4.9℃は 黄色

平年との差が  -5℃以下は 水色

【補足】一番右列の水色は「雨」をチェックする

★☆ ここで一番の重要ポイントは、黄色・水色で色分けした温度 ☆★

何故なら、①で述べたように平均気温が20℃以下、夜温(最低気温)が17℃以下の日が長く続くと不稔(実がならない)となる恐れがあり、イネの生育に要注意となるからです。

③ 結論 ‥ 現時点 7/18 において、令和元年産のお米はどう判断すれば良いか?

色付けした黄色・水色の温度を詳しく見ると、平年より -5℃以下の日が多くあるけれど、その時の最高気温が20℃以下の日が数日間続く所は殆どありません。
また、提携生産者に天候や稲の様子を尋ねたり、生育チェックを兼ねて店の脇に設置した “ミニ田んぼ ”(本文初めの写真、7/20 現在の苗丈 90cm)などを加味して考えると、
「令和元年産のお米に関して、現時点においては冷夏の状況では無い」と思います。

但し、都心では20日連続で日照時間が3時間に満たない日が更新され、梅雨明けが遅れ、東日本を中心に続く今年の日照不足は初めての事象なので、お米への影響は予測がつきません。
なので、日照不足で生育が遅れて価格が高騰している野菜・果実同様、お米も自然相手で光合成により育つ作物なので、どんな品質で収穫されるのかという不安はあります。
けれど「出穂~開花~成熟へと進む お米の生育ステージ」は 未だこれからです。

農家さんと話をすると “お天道様次第” とよく聞かされますが、天候に恵まれることが何よりです。
異常気象と言われる今日、生・消ともに常に天候への注意を心掛けて行きましょう。

④ 今後の おコメ生育ステージ、そして注意点

田んぼに植えた “イネの苗” 。

7月下旬までは
「体をつくる “穂づくり期間” 」でしたが、

8月からは
「おコメの子孫をつくる “結実期” 」という
 生育ステージに入ります。

良い機会ですので、少し詳しく、またおコメに
影響する事項などを含め説明させて頂きます。
      (事例は、関東甲信越・南東北) 

7月下旬  穂ばらみ期‥‥ 幼穂が徐々に大きくなる期間 (出穂6日位前)  

8月上旬~  出穂期 ‥‥ 穂が出始める期間
 〃〃    開花期 ‥‥ 穂が出て、花が咲く期間 (開花の適温は30℃)

9月下旬~  成熟期 ‥‥ 稲刈り(収穫)

敵期刈取日の目安について

玄米の光沢を良くし、品質を高めるためには適期に刈り取ることが重要なのですが、
農家さんは何を目安にして稲刈りを始めるのでしょうか。
経験からと言うのもあるでしょうが、以下の3点を目安にしている様です。

          ①  出穂してから     40 ~ 50日後
          ②  出穂後の積算温度  950 ~ 1100度
          ③  稲の葉色を見る   色落したら


結実期の注意点

低温

お分かりの様に、8~9月は穂が出て花が咲きモミの中に実が入る時期(=結実期)です。
①と同じく低温に注意しなければなりません。
繰り返しますが、平均気温が20℃以下、夜温(最低気温)が17℃以下の日が続くと、 結実期では「不稔モミ」(モミの中に実が入らない)が多く発生します。

高温(猛暑)

もともと亜熱帯性の植物ですので、暑さには強いです。
しかし、昨年(平成30)のような猛暑となると影響がでます。

お米は出穂後20日間のあいだ長く高温に晒されると、白未熟粒(お米の一部が白くなる)が発生し易くなります。
白未熟粒の味は変わりませんが、大量に発生すると規格外というお米になり、農家の収入は大きく減ります。

台風

更に、9月は台風の時期ですので、発生したら台風情報を収集して注意します。
自然の力には逆らえないですが、田んぼが冠水したり、稲が倒れるなどがあると
品質や収量に影響が出てしまいます。
また、病気の発生が懸念されます。

★★☆☆
  最後までお読み下さり、ありがとうございました。
  長い説明になってしまいましたが、お役に立てましたでしょうか。

  そして、私たちの食卓に上る “美味しい農産物の背景” には、自然を相手に
  頑張っている “農家さんが居る” という事に気が付いて下されば幸いです。

  今後ともよろしくお願い致します。 

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