2ーb.農に想いをよせて(都会の人たちの農作業体験)

 将来の食料や農林業のあり方をめぐる議論の中で、その現場と一般国民の間において双方の理解や認識に ズレがあると言われてますが、農作業の実践はそのズレを見つけ認識を修復するのに貴重な体験となります。 私は過去に幾度となく”田植えや稲刈り、さつま芋の植付けや収穫作業”などの節目の時期に農業体験の企画を立て、 行なってきました。この企画はそれなりの成果があったのですけれど、参加者の体験がその時の作業だけに 限られてしまうため、私設の農業小学校のように一年を通じた農作業の体験計画を立て実施することが出来ませんでした。 つまり、作物の生育プロセスや農家の苦労等を学び知ることができないのが欠点でした。

そこに平成9年、千葉の農家さんが2畝(60坪)の田んぼを提供するので受け入れてもらえないかと声を掛けて下さったので、 消費者有志7名の方と一緒に”もち米”を作ることにしました。 発芽させた種もみを育苗箱に播種して苗を作るところから自分たちで行ない、5月の田植えには育った苗を自らの手で植えました。 その後は4回ほど田んぼに這いつくばって草取りを行ない、収穫時期を迎えた9月には鎌での刈り取り、 そしてハザ架けの作業を体験しました。

そして平成10年、この2畝の田んぼの近くにあと2畝分の休耕田を借りられることができました。 メンバーは10名に増え、出来るだけ自分たちの手で作業をこなして行くとの決意のもと 「朝8時30分から田んぼの作業、その後は午後3時頃まで畑の作業」という計画を立て実行することにしました。

 まず作業に必要な鍬・万能・鎌を購入し、3月末から休耕田を畑に変貌させました。 次に農家さんの指導を受けながら消費者メンバーは、スイカ・きゅうり・カボチャ・枝豆・大豆・八つ頭などを植え、 順次必要な作業をこなして行きました。

田んぼや畑の作業のうち半分以上は草取りで辛い時もあったけれど、何より一番の喜びは作物が収穫できたことでした。 枝豆と八つ頭はプロ顔負け「これは旨い」の美味しさでしたし、さらに収穫した大豆を使って翌年の1/21には “手作り味噌”を仕込んで1年後のお楽しみも出来ました。

もうやめられないという感じですが、それだけではありません。

平成10年11月に行なった昴穂人倶楽部の”第7回・収穫祭”では、農作業を体験した2人の小学生と4人のお母様がその記録をスライドにして『自分たちの田と隣の田を見比べ、イネの色や成長の違いに気がつきその意味を知ったことや、田んぼや畑にはいろんな生き物が住んでいることや、無農薬で作ることの難しさ大変さ』などを発表しましたが、農作業を行なう前と後では体験者の意識に明らかな変化が見られました。 つまり消費者中心の考え方から農の現場に目を据えた考え方に変ってきたということで、私にはこの変化の方が重要と思いました。 そのことが誰にも授かる”いのち”を原点にしたコンセンサスづくりへの第一歩となるからです。

 平成11年の田んぼと畑は、前年まで体験していた田畑の地域が県の農地整備事業の工事が始まるため少し離れた 別の場所に変りました。 それに伴い”田んぼ”と”畑”は、それぞれが今までの2.倍以上の広さとなる150坪(495m^2)の面積になりました。 打ち合せや準備も整い、2月の”椎茸の菌打ち”から作業の開始です。 体験する消費者の心に今年はどのような”いのち”が育つのでしょうか? “手作り味噌”同様、こちらも楽しみです。

【備考】

1.平成11年より農業体験グループの名称を『江東・土の会』と命名する。

2.『江東・土の会』の農業体験は、3月~11月の日曜・祝日に実施。

3.新しい場所の”畑”は知力の無い土壌であったこともあり、土作りから行なう。

 3-1. 平成11年11月から平成12年2月 
     畑に大きな焚き火を数ヶ所で燃やし、焼き畑を3回行なう。
 3-2. 平成11年9月から平成12年11月 
     ナマの牛糞を何度も切り返しての堆肥作りを実践し、
     出来た堆肥を畑に入れる。

 この結果、土を知らない都会の消費者でも年度を重ねるごとに土が良くなって いるのが判るほど土が変ってきた。

4.平成14年の作付け品目
 田んぼ : もち米(品種:月見もち)
 畑   : じゃがいも、茄子、ピーマン、トマト、枝豆、かぼちゃ、
       スイカ、落花生、さつま芋